高岡正人在モンゴル日本大使館特命全権大使に,共同事業,現在の状況,今後の関等についてインタビューをした.
 
―安倍晋三首相は二国間関係を,“モンゴルと日本両国は,北東アジアにおいて最も親密な戦略的パートナー国である”と述べていた.今年は,両国の外交関係樹立45周年に当たる,両国関係はどのようなレベルにあると思われるか.
外交樹立後45年間で、日本とモンゴルの関係はめざましく発展し、協力関係が進んでいることを喜んでいる。日本とモンゴルの関係は、非常に多くの分野に至っている。我々の協力事業の発展が良好なのは、すべての分野で、さらに国民一人一人の間での関係においても広まっていることからも見られる。1990年代の民主化以降、日本国はモンゴル国を支援してきた。これは日本がモンゴルに親しみがあることの表れである。モンゴル国は将来的に発展の可能性が非常に大きい。つい最近、日本の写真家・杉山氏の写真展が開かれた。モンゴルの35年の歴史を見せたこの写真展から、モンゴル国の、中でもウランバートルの発展が急速に進んでいることが見て取れる。この中で日本国の支援が少しでも貢献できていたなら、我々にとって非常に喜ばしいことで、また誇りでもある。
 
―近25年間で,日本国は25億米ドル相当の無償援助,ソフトローンを行った,日本の無償援助が停止されたという話があるが、これについては?
日本の無償援助は、モンゴル国の経済状況に直結する問題である。もちろん、モンゴル人の収入水準が上がれば、無償援助を停止する理由になる。しかし、日本側からモンゴルに行うすべての無償援助を停止するということにはならない。今後も無償援助の枠組み内で行っていく援助もある。日本大使館から行っている“草の根無償援助”が、その中の確かなものである。
 
―モンゴル国の経済状況を、個人的にどう評価しているか?
現在、モンゴル国が直面している問題は、モンゴル経済に新しい問題である。この中で、モンゴルにとって金融・経済を復活させるのが大きな目標になると思っている。モンゴルは広大な国土を持ち、天然資源が豊富な国である。近年、経済が急速に成長している。しかし、国際的支援を受ける状態が変わらないため、国際通貨基金のプログラムを実施することになった。モンゴル国のこのような状況に、日本から8億5000万米ドルの経済支援を行うことになった。モンゴルは経済を回復させることを重要視するのが、第一の仕事だと思う。
 
―日本は経済改革をするのに、何を重視するか。日本とモンゴルに違いがあるか。
日本とモンゴルの違いは、資源である。日本には資源というものが、本当にない。そのため、我々が重要視するのは産業だ。日本国は他が生産しているものから学び、そこからアイディアを得て、真似してきた。しかし、注文者が本当に何を必要としているのかを我々はよく調査し、注文者、消費者の希望しているものに合わせ、生産し、販売するよう努めている。私に個人的な考えがある。これがいいかどうかはわからない。“モンゴルでは個人が一人で成功することがとても多く、日本では協力して、共同作業をより重要視し、この能力を高めようと努力する”。この文化が国ごとにビジネスを行うやり方の違いを生み出しているのだろう。
 
―両国の経済、貿易は現在どのような水準にあるか。将来的によりよくしていくためには、どんなチャンスがどれぐらいあるか。
現在の状況では、日本からモンゴルに向けた輸出額が高い。これは自動車輸出によって起きている。政治的、文化的関係が高レベルに至っていても、経済関係はそこまで至ることができていない。ビジネス関係が将来的により発展するのは明らかだ。しかしモンゴル国がこの面でより力を入れることが大切だと思っている。
 
―ビジネス協力関係で、投資について話さないわけにはいかない。日本からモンゴルへの投資は多くなった。モンゴルに興味がある日本投資家は、どれぐらい多いか。どのような分野への投資を考えているか。
投資会社それぞれで興味が違う。しかしモンゴルのインフラ分野への投資に興味がある会社が多い。もちろん鉱業分野への興味も高い。私は先週、日本の30人近くのビジネス代表者らとオユトルゴイ事業を視察した。風力・太陽光エネルギー生産分野への進出を考えている企業もある。再生可能エネルギー分野は、日本・モンゴル協力事業の重要分野になると期待している。
 
―第5火力発電所プロジェクトはどうして停止したのか。継続するか。
この問題はとても難しいものになっている。モンゴルの投資環境、法律が主な問題を起こしている。モンゴル国にとって法律、規則の改正は、政策実行過程が遅い。これは投資環境に悪い影響を与えている。これらの一つの例が、火力発電所のプログラムだ。ひとつの企業が投資しようとする際に、巨額の資金になり、期間が必要になる。しかしこの多大な努力が何の結果もないと、その投資家にとって大きな損害になる。このような状況が何回も繰り返されると、モンゴルに興味がある投資家たちに悪い影響を与える。現在の状況は、火力発電所プロジェクトの将来は明らかではないと言える。
 
―日本と共同で、Tanantolgoi-Sainshand方面の鉄道建設について話された。鉄道に関連して、石炭輸送の問題が注目を集めている。日本はモンゴルから石炭を買おうという考えがあるか。
今年オーストラリアで起きた洪水によって、石炭貯蔵が十分な量に至らなかったことで、輸出量が大幅に減った。その時、モンゴルから石炭を輸入したというニュースがあった。現在のところ、モンゴルから石炭を輸入するという正式な協議、予定はない。しかし石炭を輸入するなら、輸送経路に注意する必要がある。
 
―もし日本がモンゴルから石炭を輸入する条件が整えば、Gashuunsuhait国境検問所から輸送するか、それとも最近話され始めたVostonchi国境検問所のどちらかがより近く、利益があるとみているか。
鉄道問題は、モンゴル国内でかなり話されている重要なものなので、今これについて評価するのは、私にとってふさわしくないと思っている。しかしタワントルゴイ鉱床と関連する日本の事業を見ると、“住友”コーポレーションは販売の面で神華などのコーポレーションと共同で事業を行う権益を得ている。この事業がどのぐらい拡大するかに注目する。
 
―モンゴル国で一番将来性があるのは、どんな分野だと思うか。
社会面から見ると、モンゴルには能力がある人材がとても多い。これはモンゴルの大きい長所だ。もちろん国土、鉱山は利益をもたらす。モンゴルにとって天然資源よりも一番高い価値があるのは、人材である。しかし、経済面では観光が重要な分野だ。日本とモンゴルは地理的にとても近いので、往来が簡単だ。この長所を生かして、観光客の数を増やすのが大切だと思っている。モンゴル・日本間の旅行者の数は2万8千人に達している。モンゴルには美しい自然、興味深い歴史と文化がある。これらをもっと活かすべきだと、 私は個人的に思っている。
 
―観光分野について話すと、すぐに新空港プロジェクトが頭に浮かんでくる。Hushigiin hundii国際空港プロジェクトを、日本のソフトローンで実行している。このプロジェクトの意義を、どう評価しているか。
このプロジェクトには重要な意義がある。国際空港はその国の顔、玄関口である。そのため新空港が開業することで、モンゴルの姿、素晴らしさをより明らかに、大きく見せるチャンスができるとみてもよい。Hushigiin hundii新空港建設過程がより進み、できるだけ早く開業してほしいと望んでいる。
 
―国際通貨基金のプロジェクトで、日本からの8億5000万米ドルの融資を、どのように、いつ、どのぐらい行うか。
国際通貨基金、世界銀行など協力事業を行っている国際機関と協力し、調査事業を続けている。来週、国際通貨基金の代表者がモンゴルに来るという話がある。その際に国際通貨基金が実施しているプログラムを将来的にどのように継続し、どのような規則に従っていくかを話し合う。いずれにせよ、我々の方から3年間で融資を明確な計画に従い、段階的に行っていく。
 
―モンゴルのバトトルガ大統領が安倍晋三首相と会談した際に、安倍首相が北朝鮮との間の問題を解決するのにモンゴルが懸け橋になると期待していると表明した上で、モンゴルが北朝鮮に圧力を与えることが必要だと強調した。モンゴルは日本にどの程度重要な影響を与えられるか。
これまでになかった、非常に深刻で困難な状況に至っている。我々の方から、モンゴルが国際社会とひとつになって、北朝鮮に圧力を与えるのを支持してほしい。過去にモンゴル国は日本国に重要な支援をしてきた。この中でも日本人拉致問題で協力し、大きく貢献したことに、我々は深く感謝している。しかし北朝鮮の現在の状況に、我々がモンゴル国に望むことは、国連の安全保障理事会から出た、北朝鮮に関するすべての規則に従い、北朝鮮に圧力を与えることである。いつか協議が必要になる。しかし今は、適切な時期ではない。過去に我々は協議しようと何回も試みた。しかし今、我々は現実的な結果が確実だという時に協議を行う。今の状況はこのような機会ではなく、圧力をかける時である。
 
―2020年の東京オリンピック開催に関連して、モンゴルから日本へ行って働く人々の数が増えている。日本でどのぐらいのモンゴル人が生活しているか。将来これに関して正式な協力事業を始めるチャンスがあるか。
現在、約9000人のモンゴル人が留学、仕事をしている。昨年、日本ビザを申請した約17,500人にビザを発行した。日本での労働に現在のところ、制限はない。条件を満たしていれば、我々は受け入れている。現在日本が直面している問題は、若者の数が少ないということだ。このため外国からの労働力を受け入れるのが多くなっているのは、事実である。
 
―両国の関係、協力事業の将来を、どうみているか。
日本とモンゴルの関係は、両国関係のみに限られない。我々が住んでいるアジア・太平洋地帯、さらに世界規模で協力事業を行う希望があり、これに強く期待している。その意味で外交関係、安全保障の面で、それらの問題を管轄する機関の間で会合、協議を開催し、強固な協力事業を行う。
 
―在モンゴル日本大使は、それぞれの何かを残していく伝統がある。例えば太陽橋、太陽ロードが言える。高岡大使にとって、残したいと思っているものがあるか。
( 笑って)今のところ、予定しているものはない。これに関して意見があれば、寄せてほしい。