モンゴル経済の動向について、国際通貨基金(IMF) と アジア開発銀行(ADB) が相次いで警戒を示した。両機関の最新報告書によると、2023〜2024年にかけて鉱業の拡大によって一時的に回復したモンゴル経済は、2025年以降、再び不確実性と脆弱性を抱える局面に入ると分析している。
過去2年間、石炭輸出の急増が経済成長を支えたが、2025年に入り石炭価格と輸出量が減少。これにより、財政収入の縮小、経常収支の悪化、MNT安の進行が同時に進んでいる。インフレ率は8〜9%に達し、中央銀行の目標を上回る水準が続いており、生活コスト上昇の主要要因となっている。さらに、経済構造が鉱業に過度に依存しているため、資源価格の変動リスクに脆弱な状態が続いている。
IMFは、モンゴルの銀行・ノンバンクの過剰な貸出拡大が金融安定性に深刻なリスクをもたらす可能性を警告。また、外貨準備の減少と経常赤字の拡大により、外部ショックに対する耐性が低下していると指摘した。加えて、中国の石炭需要への依存度が依然として高く、外部要因による影響リスクが強まっている。
IMFは、汚職、国家介入、法制度の不安定さが民間投資を抑制しているとし、これらを「モンゴル経済の深層リスク」と表現した。国有企業の透明性向上と説明責任の強化が不可欠であり、再生可能エネルギーや資源多様化への移行政策が急務であると強調している。
- 財政規律の強化:GDP比2%以内の構造的赤字を維持し、非鉱業分野の税収を拡大する。
- 金融政策:インフレ抑制を最優先とし、必要に応じて政策金利を引き上げる。
- 為替政策:為替レートの柔軟化と市場原理に基づく運用、外貨準備の積み増し。
- 金融安定性:信用膨張の抑制と監督体制の強化。
- 構造改革:国家の経済介入を減らし、汚職防止策を実効性ある形で実施する。
アジア開発銀行の最新報告「Asian Development Outlook 2025」によると、モンゴルの経済成長率は2025年および2026年ともに5.7%と予測され、4月時点の6.6%から引き下げられた。主因は、石炭輸出の減速、政府支出削減、および中国の鉄鋼需要の低迷によるものである。同報告書では、2025年前半の成長を支えた要因として、家畜頭数の回復とOyu Tolgoi鉱山の坑内堀採掘の進展を挙げている。一方で、収穫量の減少が農業部門の成長を抑制し、今後はサービス業や非鉱業分野が成長をけん引すると見られる。
2025年前半のインフレ率は中央銀行の目標を上回って推移しており、年平均で**8.6%に達する見込み。政府が公共料金の値上げを先送りしたことで、一時的に物価圧力は緩和されるが、2026年も7.2%**前後の高水準が続くと予測されている。ADBモンゴル事務所代表 Shannon Cowlin 氏は「モンゴル経済は比較的安定しているが、より多様で持続的な成長モデルへ移行することが今後の課題である」と述べ、資源依存のリスクを軽減するための構造転換の重要性を強調した。
IMFとADBの共通の認識は明確である。モンゴルの短期的成長は依然として鉱業に依存しているが、長期的にはこの依存構造が経済の安定性を損なう要因となる。したがって、モンゴルは再生可能エネルギー、製造業、サービス業を基盤とした経済多様化への本格的な転換を進める必要がある。
情報源:itoim.mn