①正式名称:モンゴル国(英語表記:Mongolia)
②政治体制:共和制
③首都:ウランバートル(Ulaanbaatar)
④面積:156 万4,116km2(日本の約4.2倍)
⑤人口:3,000,000人(National Statistics Office:モンゴル国家統計局、以下NSO、2015年3月)
⑥民族:モンゴル民族(全体の95%)及びカザフ族等(5%)
⑦言語:モンゴル語、ソ連時代の影響を受けてロシア語を話せる国民も多く、また若年層は
 英語をはじめ日本語やドイツ語、韓国語、中国語、フランス語等を学んでいる。
⑧宗教:チベット仏教等、1921 年の革命後は衰退していたが、1990 年の民主化以降再び
  広まる。1992年の新憲法では信教の自由を保障。
⑨平均寿命:男性65 歳、女性72 歳(NSO、2010)
 
経済概要
  • 主要産業:鉱業,牧畜業,流通業,軽工業
  • 名目GDP:11,160百万米ドル(2016年,世界銀行)
  • 一人当たり名目GDP:3,856.8米ドル(2016年,世界銀行アトラス・メソッド,NSO)
  • 経済成長率:1%(2016年、NSO)
  • 失業率:3%(2016年、NSO)
  • 貿易総額:8,275.3百万米ドル(収支:+約1,559.4百万米ドル)(2016年,NSO)
  • 1)輸出 約4,917.3百万米ドル
  • 2)輸入 約3,357.9百万米ドル
主要貿易品目
  • 1)輸出 鉱物資源(石炭,銅精鉱,蛍石など),原油,牧畜産品(カシミア,皮革)
  • 2)輸入 石油燃料,自動車,機械設備類,日用雑貨,医薬品
  • 外貨準備高:1,323.1百万米ドル(2015年末時点,NSO)
  • 主要貿易相手国(上位5か国)
  • 2)輸入 中国,ロシア,日本,韓国,アメリカ
経済概況
 
民主化以降,日本を始めとする各国や国際機関の指導,助言及び支援により市場経済化に向けた構造改革を推進し,1994年に初めてプラス成長に転じた.その後も順調に経済が発展してきたが,2008年,世界的な金融・経済危機の影響を受け,2009年にはマイナス成長となった(-1.3%).その後,2010年に入り,鉱物資源分野の順調な発展に加え,鉱物資源の国際相場の回復が内需の拡大を後押ししたことにより,2010年の経済成長率は6.4%,2011年には17.3%とV字回復を果たした.2012年12.4%,2013年11.7%と高い経済成長を続けたが,資源ナショナリズムを背景とする制限的な対モンゴル投資政策や法律の制定により,対モンゴル外国投資が激減したほか,中国の景気減速や世界的な資源安の影響により主要産業の鉱業が不振となり,2015年の経済成長率は2.3%,2016年は1%まで落ち込んだ.こうした厳しい状況を踏まえ,モンゴル政府は2017年2月,国際通貨基金(IMF)との間で拡大信用供与措置(EFF)の受入れに合意した.今後はIMFのEFFに基づき,財政政策,金融政策及び銀行の改革に取り組み,いかに経済・財政の立て直しを行うかが課題.
 
1. 地理
モンゴルは,ロシアと中国の間に挟まれた内陸国で,全面積は1,564.116km2 と日本の約4.2 倍である.中国とは西部,東部,南部で4,673km の国境で接し,ロシアとは北部で3,485kmの国境で接している.国土の65%はステップとよばれる草原,南部の1/3 はゴビ砂漠,森林と山岳地帯は12%で主に北部に位置している.
 
 
1-2. 気候
モンゴルは,中欧・米国北部諸州と同じ緯度(北緯42°から52°)に位置し,海洋から離れた内陸国で,気候変動が大きく,降雨量は少ない.ウランバートルの降雨量は年平均220mmと,短い夏に集中し,冬は一般的に乾燥しており非常に寒い.年間の晴天日は約250 日で,夏には40℃近くになる.日もある一方,真冬は零下40℃を下回ることもある.夏は約1 か月と短く,1年のうち約半分は氷点下の日となり,ウランバートルでも8 月末に雪が降ることがある.日中と夜間及び冬季と夏季の気温差が激しい.気候と地理的環境のため,穀物農業には制約があり,牧畜業に適している.遊牧による牧畜(主として羊,山羊,馬,牛,ヤク,ラクダ)が,モンゴル経済の主産業になっている.
 
1-3. 言語
モンゴル語。表記はキリル文字。社会主義時代はロシアの影響が大きく,義務教育の一環としてロシア語教育が行われていた.民主化以降は,英語及び日本語等,諸外国語教育も盛んになってきている.

1-4. 歴史
近代モンゴルの歴史は,チンギスハーンがモンゴル民族を統一し,アジア・中東・欧州への一連の軍事侵攻を開始した1206 年に始まる.チンギスハーンの息子と子孫たちは,13 世紀に歴史上最大の帝国を築き上げ,領土は現在の北部ベトナムから中東,ロシア及び東欧まで広がった.しかし14 世紀の半ば内部闘争により帝国が崩壊し,17 世紀に中国の満州清王朝がモンゴル全土を支配した.
1911 年の辛亥革命により,北部モンゴルの皇太子はUrga の生仏と言われたJavzadamba Khutukhtと共にモンゴル自治国を宣言,1921 年7 月に独立国家として独立を宣言,1924 年に生仏が死ぬまで王国として存続した.1924 年,ソ連支援の下,社会主義に基づく中央計画経済・政治システムによるモンゴル人民共和国が形成された.ソ連の支援は65 年間続いたが,1989 年になってソ連軍の撤収及びソ連のグラスノチが起こり,ウランバートルで民主化運動が始まった.多くの東欧諸国と同様に,共産政権の崩壊が起こり,民主的政治制度が採択された.

1989 年末に複数政党制の採用,自由選挙実施等,民主化が急速に進展した.1992年1月に新憲法が採択され,同年6月に新憲法に基づく初の総選挙が,1993年6月に国民の直接投票による大統領選挙が実施された.また,1996年6 月の総選挙では民主連合が過半数を占め,エンフサイハン民主連合議長が首相に選出され,大規模な行政機関統廃合,公共料金大幅引上げ,国有企業の民営化,自由貿易政策の徹底等の諸改革を実施した.1997年5月の大統領選挙で人民革命党のバガバンディ党首が選出された.1998年1月の法改正及び関連決議により,エンフサイハン政権は4月総辞職に追い込まれ,与党最大会派の民族民主党エルベグドルジ党首が新首相に選出された.
 
1-5. 文化
音楽,衣装をはじめ,興味を引くものが多い.
  • 馬頭琴
馬頭琴は『草原のチェロ』といわれる。
さおの先の弦巻きの上端には,その名の由来である馬の頭の木彫りがあり,モンゴル人にとって「命」とも言える馬の姿が刻まれ「モンゴル人の魂」を象徴している.小学校の教科書にも載っているモンゴル民話「スーホの白い馬」が馬頭琴の始まりを伝えており,羊飼いの少年が愛した白い馬が,「ずっとあなたの傍にいられるように,私の骨や皮,毛を使って楽器を作ってください」と言い残して死んでいったのが馬頭琴の始まりという伝説である.
  • オルティンドー
『長い歌』の意味を持つ,モンゴル民謡の代表的な歌唱法である.オルティンドーは,豊かな声量で音を自由に長く伸ばして歌うのが特徴,喉を巧みに操り何とおりものビブラートを使い分ける.
  • ボギノドー(ボグンドー)
『短い歌』の意味。この民謡の特徴は,リズムが規則正しくはっきりとしていること.
歌詞は風刺や皮肉を利かせた内容のものが多く,速いテンポで歌われる.
  • ホーミー(喉歌、。ホーメイ。)
声帯を振動させながら気管や口腔で倍音を共鳴させ,同時に二つの音声(ときには三つの音声)を発する技巧です.西モンゴルのアルタイ地方で発生した唱法と言われている.
 
1-6. 人口
人口 3,000,000人(2015年3月),世界で最も人口密度の小さい国の一つである.首都ウランバートルの人口は 130 万人。人口の 6 割は都市や定住地に住み,4 割は主に牧畜を営んで生活している.