1. マクロ経済の情勢
 
2014年GDPは120.1億US$,一人あたりGDP は4,320US$である.GDP 構成(2014年)は,鉱業部門17.08%,農牧畜産林業13.5%,卸小売等流通関連11.0%,運輸・通信・倉庫6.6%,製業で8.2%, 建設不動産で4.9%である. GDPの53%は輸出で占められており,輸出の約80%が鉱物資源であるから,鉱業は外貨獲得の面で,最重要産業である.2014年の主要な輸出品目割合は銅精鉱が44.5%,石炭が14.7%,原油が10.9%,鉄鉱石が7.7%,金が7.0%,亜鉛鉱石と亜鉛精鉱が1.9%であった.鉱物資源の輸出先は経済発展の著しい中国である.伝統的輸出産品では,カシミアを主とする繊維・繊維製品が輸出の約9%を占める.雇用吸収の面では,酪農,カシミア等の伝統的産業が重要である.遊牧の伝統から山羊,羊,牛,馬等の家畜が6,400万頭を飼育しており,家畜関連産業も比較的優位にある.
 
2.   経済危機,成長及び経済成長低下,外国投資の減少,回復
鉱物資源価格の高騰で,2008 年までの3 年間のGDP は平均9.2%成長し,順調に成長してきGDP(名目)も2006年の1,236US$から2008年には1,818US$と47%上昇していたが,2008 年10 月の世界金融危機により,世界経済の急激な縮小から資源価格が暴落し,輸出収入が激減したが,輸入削減が遅れたため外貨危機に陥り,MNT 価値が急落した.政府は金融引き締めの強化,2009年4月にIMFから240.9百万US$のStand By Credit(2010年10月1 日まで)を借り入れ,主要援助国及び世界銀行(WB)アジア開発銀行の間,モンゴルはIMF管理下でマクロ経済の調整を行い,経済は安定する傾向になった.ADB等からの緊急支援等で経済調整を行い,危機を回避した.IMFの借り入れにより1年半,2009年第4四半期からの回復輸出は中国の強力な成長の恩恵を受け,中国向け銅,石炭輸出量の増加,価格高騰により,回復してきた.
 
外国直接投資額

出展:モンゴル国家統計局のデータによりBlueridge社作成
 
中国向け銅及び石炭輸出の増加,価格高騰と共に2009年10月には数年間の交渉を要したOyu Tolgoi銅・金鉱床開発にかかる投資協定(モンゴル政府-Ivanhoe,Rio Tinto)締結,中国の原料炭需要の増加などにより,外国直接投資の大量流入,拡張的なマクロ経済政策などから急速成長し,2011-2013年にかけて3年連続の2桁成長(2011年に17.6%増)を果たし,世界有数の高成長国となった.
 
アジア諸国の経済成長比

出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成
 
外国直接投資が最高額に至った2011年に流入した49億US$の86.7%の40億USドルが,鉱業へ融資された.外国投資の61%以上が香港,中国の証券取引所,銀行,金融機関の経由だった.しかし,2012年以降の資源価格の低迷,不透明な投資環境,新規探鉱ライセンスの発行停止,最大プロジェクトであるOu Tolgoiプロジェクトの新規投資停止(坑内掘鉱山へ融資停止)による外国直接投資の激減に加えて,金融緩和政策や財政赤字,貿易赤字の拡大などの副作用から国際収支が悪化し,外国準備高が減少したことを受けてマクロ経済が全般的に悪化した.

外資準備額

出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成
 
3. マクロ経済の回復
 
2014年モンゴルのマクロ経済は外国投資の減少,主な輸出品である鉱物資源の市場価格低下,最大の貿易及び投資相手の中国の経済成長が低迷状態となった中,2012年に国際市場で発行された15億US$のChingis国債及びサムライ債の返済(2017年に500百万US$を返済するべく)などの対外債務,財政赤字の増加により,モンゴルの信用格付け低下し再び経済危機に直面する可能性も高まってきた.しかし,モンゴル政府が2017年にIMFと効率的に協力した結果,EFF・プログラムにより50億US$の支援を受けることに一致.また,一部を受け取りはじまった.主な輸出物である銅精鉱,原料炭の価格上昇の影響を受けて2017年第2四半期にGDP成長率が+4.5%(2016年に+1%に減少)に回復.IMF及び世銀などはモンゴルの経済成長を長期的に7~8%で安定的に上昇する分析している.
 
4.  貿易
 
モンゴルの貿易総取引額は小さく,2014年の総取引は110億US$(輸出は58億US$,輸入は52億US$,収支は5.3億US$:2014年に貿易収支が2006年以降始めて黒字)だった.
過去10年(2004-2013年)に輸出依存度の平均は45%前後だったが,2014年に49.3%の水準に至った.輸出額に占める鉱物資源の割合は非常に大きく,2013年に88%,2014年には83%になった.
 
モンゴルの貿易取引

出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成

2014年の主な輸出入品グループ別
商品グループ 輸出(%) 輸入(%)
鉱物資源 83.0 28.0
機械、機器、電気機器、レコーダー、テレビ&スペアパーツ 1.0 18.8
自動車、航空機及びスペアパーツ 0.6 11.8
織物及び織物商品 5.9 1.3
皮、なめし皮、革製品 0.6 0.1
宝石、貴金属、ジュエリー 7.0 0.1
ベースメタル、メタル製品 0.8 10.3
その他 1.1 29.6
出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成

表7. 主な輸出製品額-種類別
  2012年 2013年 2014年 輸出額-2014年
(百万US$)
輸出額に占める割合(2014年)
石炭 20,915.5 18,373.1 19,499.1 849.0 14.7
銅精鉱 574.3 649.8 1,324.4 2,573.6 44.5
鉄鉱石 6,4153 6,724.9 6,324.4 446.3 7.7
原油(千bbl) 3,568 5,243.8 6,885.1 634.6 10.9
亜鉛鉱石・精鉱 140.9 130.9 113.1 113.1 1.9
金(t) 2.8 7.6 10.0 405.2 7.0
出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成


出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成

主な輸入製品の割合-種類別

出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成

2014年の輸出相手国,輸入相手国の割合(%)

1.2.3 海外投資
 
2005~2014年末までの間に,99 か国9,450の外国投資企業が登記され,直接投資金額は
160億US$で,そのうち76.8%は2011~2013年に投資されている.

外国直接投資額-国別(1990~2014年)

出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成

外国直接投資-セクター別(1990~2014年)

出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成
 
外国投資の減少に,2012年4月に制定された“戦略的なセクター(鉱業,銀行,金融,メディア,情報通信)における外国投資法”[1]による外資規制の強化,Oyu Tolgoiプロジェクトにおける課税,権益,投資額の上昇などに関するモンゴル政府とRioTintoとの対立による坑内掘鉱山への投資停止(2013年8月),TavanTolgoi炭田国際入札の不透明な状況,資源ナショナリズム的な対応を強く表明する政治家及び社会の行動,石炭価額の急騰により,2013年,2014年に渡って外国直接投資は連続に減少し,2014年に580百万US$(前年比45.9%減,最高準となる2011年と比較し88.3%減)になった.
 
外国直接投資額(2005~2014年)

出典:モンゴル国家統計局データよりBlue Ridge社作成
 
経済成長のダウン,財政赤字を受けてモンゴルが政策のやり直しを行い,資源ナショナリズム的な“戦略的なセクターにおける外国投資法”の代わりに2013年10月に 外投資を奨励する“投資法”を制定し,投資家にとって有利な投資法を制定.また,2015年5月にRio Tintoとの交渉を進め,投資問題をクリアし2015年5月に“坑内掘鉱山への融資計画”に調印したため,2016年から坑内掘鉱山へ投資を再開することに両方が合意済,2014年12月にTavan Tolgoi炭田の国際入札の再開,新規探鉱権の再発行などの外国投資を奨励する,ビジネスしやすい環境を整備する政策を積極的に行ってきた.鉱物資源価格の低下,中国経済低迷などにより,短期的に外国直接投資が減少する傾向でTavanTolgoiプロジェクトの国際入札・開発により外国直接投資が回復する可能性はある.ただし,大型鉱山プロジェクト,鉱業のみへの外国投資により経済成長を遂げられたとしても,停滞すればマクロ経済全体が困難に直面するリスクを避ける対策が必要だとして,モンゴル政府は鉱業の依存度を下げるため,鉱業以外の産業を支援する,外国投資を奨励する対策の重要性を協調した政策を行っている