外交
 
外交政策は,非同盟中立で,現実的かつ平和主義外交を展開している.大国のロシア及び中国に挟まれており,国家安全状の配慮からどちらか一方偏らず,バランスを維持することを最優先にしている.次に第3-隣国政策(The Third Neighbor Policy)と呼ばれる日本,米国,韓国,ドイツ等との関係の強化があり,これは地政学上のバランス維持の配慮に基づいている.
また,非同盟諸国会議への加盟,ASEAN地域フォーラム(ASEAN Regional,Forum,ARF)への参加,中東湾岸諸国との関係の重視等、安全保障の見地からも多面的・多角的な外交を展開している.2016年にアジア欧州会合(ASEAM Asia Europe Meeting)の首脳会談がウランバートル市で実施される.
 
1. 日本との交流
 
1) モンゴル・日本の交流
  • 1972年-外交関係
  • 1996年-総合的パートナーシップ関係
  • 2010年-戦略的パートナーシップ関係
2) 協力事業に関する書面
  • 1974年-文化交流取極
  • 1977年-経済協力協定
  • 1990年-貿易協定
  • 1991年-青年海外協力隊派遣取極
  • 1993年-航空協定
  • 2001年-投資保護協定
  • 2003年-技術協力協定
  • 2013年-戦略的パートナーシップ関係の中期行動計画
  • 2015年-経済連携協定(EPA・Economic Partnership Agreement)

出展:モンゴル投資庁データによりBlue Ridge社作成
 
日本からの直接投資額の推移(年別)
 
1990-2014年までに日本の投資総額は206百万ドル(全直接投資の1.46%)であり、
49.5%は貿易・食料,13.5%は軽工業,9.5%は銀行・金融,5.9%は観光, 5.8%は建築業だった。
     
日本の投資企業数(百万$/年別)


出展:モンゴル投資庁データによりBlue Ridge社作成
 
日本の投資企業数は550社であり,外国投資企業の位置づけで第4位に位置する,
モンゴルは日本から主に一般機械,電気機器,車両,輸送用機器などを輸入している,
日本への輸出商品はカシミア,カシミア製品,羊毛靴下,革製品,干し肉,ペットフード,
鉱物サンプル,土壌及び植物のサンプル,岩塩,蜂蜜など,だが,輸出額は圧倒的に小さい,例えば2014年の日本貿易額におけるモンゴルからの輸出は6.6%にすぎない,
 
対日本輸入額、全輸入額に占める日本の割合(百万USD)
 

出展:モンゴル投資庁データによりBlue Ridge社作成

1990年にモンゴル民主化・市場経済へのい移行を始めてから現在に至るまで,日本はモンゴルの最大援助国であり,二国間関係は幅広い分野で着実に発展している.1997年から「総合的パートナーシップ」関係の下で,両国関係が発展してきた結果,「戦略的パートナーシップ」の構築を目標にした両国の首脳レベルの会談が多数実施されてきた.2013年3月に安倍総理がモンゴルを訪問した際,日本とモンゴルとが共有する3つの精神「自由と民主の精神」「平和の精神」「助け合いの精神に言及し,これが両国関係の発展の基礎にある旨を述べ,Irch・イニシアティブを提案した.同イニシアティブは「投資ビジネス環境の整備」「人材育成」「基盤整備・開発」を基礎にし,両国の官民関係を様々なセクターで開発するイニシアティブになった.
2015年の段階でIrch・イニシアティブに指定されたJBIC・クレジットライン設定、経済連携協定(EPA・Economic Partnership Agreement)の締結なども実施済。2015年5月に日本を公式訪問したTs.Elbegdorj大統領が,Tavan Tolgoi炭田から東へ行く1,300kmの鉄道プロジェクトに協力する案を日本政府へ提案した結果,モンゴル外務省とJBICとの間に融資協力におけるMOUが締結される.両国間の経済交流,投資は政治的な交流より出遅れている.
 
2. 日本・モンゴル経済 連携協定における投資
1)交渉の経緯
  • 2009年7月バヤル首相(当時)が麻生総理(当時)に経済連携協定の締結を要望
  • 2010年6月~2011年3月官民共同研究
  • 2012年3月野田総理(当時)とバトボルド首相(当時)の首脳会談で交渉開始を決定
  • 2012年6月~2014年7月7回の交渉会合
  • 2014年7月エルベグドルジ大統領の訪日時に大筋合意
  • 2015年2月サイハンビレグ首相の訪日時に署名
2)日本・モンゴル経済連携協定の意義
  • 貿易の拡大やエネルギー・鉱物資源分野等における投資環境の改善を通じて,                                      モンゴルとの[戦略的パートナーシップ]を一層強化
  • モンゴルからのエネルギー・鉱物資源の安定供給に寄与                                                              (石炭,ほたる石,レアメタルを輸入・モンゴルは金,銅等も産出)
  • 民主化・市場経済化し,今後も中長期的な高成長が見込まれるモンゴルの経済成長を,                            日本の経済成長に取り込む
  • 物品貿易,サービス,投資,電子商取引,競争,知的財産等のルールを盛り込んだ                                        包括的な協定・モンゴルにとって初の経済連携協定
3)日本・モンゴル経済連携協定に含まれる主な分野
  • 物品一般ルール・原産地規則
関税の撤廃又は削減,内国民待遇の供与等の義務のほか,二国間セーフガード措置を規定・エネルギー・鉱物資源を含む両国の関心品目について,輸出入規制措置を導入する場合の情報提供を規定・特恵関税の対象となる原産品の認定基準・手続等を規定.
  • 税関手続及び貿易円滑化
物品の貿易を円滑化するため,税金手続きの透明性の確保,物品の速やかな通関のための
措置,事前教示,両国の税関当局の協力及び情報の交換等を規定・
  • 衛生植物検疫措置
     衛生植物検疫措置(SPS措置)の国際基準への調和に関する協力,平等性の認定について
     規定・小委員会を設置・
 
強制規格,任意規格及び適合性評価手続
 
貿易促進を目的として,国際規格の利用,強制企画の策定,適合性評価手続の結果の
受入れ等について規定・小委員会を設置.
  • サービスの貿易
両国間のサービスの貿易を促進するため,市場アクセス,国民待遇,最恵国待遇,
透明性等の規律について規定・GATSの下での約束を超える自由化を約束.
  • 自然人の移動
    短期商用訪問者,企業内転勤者,投資家等及びそれらの配偶者・子女等の入国及び一時       
    的な滞在を保障.入国・一時滞在に関する手続の透明性の確保についても規定.
  • 電子商取引
電子商取引の促進のため,電子的送信に対する関税の不賦課,デジタル・プロダクトの
無差別待遇,消費者保護等を規定.自国でのビジネスの条件として自国内へのコンピュータ―施設の設置等を求めることの禁止を規定.
  • 投資
既存の日本・モンゴル投資協定を上回る内容.投資許可段階の内国民待遇・最恵国待遇の付与,技術ライセンス契約に対する政府の介入の禁止(ロイヤルティ規制の禁止), 
エネルギー・鉱物資源を含むあらゆる分野における公式均衡待遇及び投資家・政府間の
契約遵守の義務付け,投資家と国家間の紛争解決(ISD条項)等を規定.
  • 競争
反競争的行為を規制するため,双方の当局が自国の法令に従って適切と認める措置を
とる旨規定.また,当局間の具体的な協力手続等について規定.
  • 知的財産
透明性の確保及び手続簡素化の観点から,出願に関連する情報の公開等について規定.
知的財産の保護及び知的財産権の行使強化のため,周知商標の保護,非開示情報の
保護,商標権・著作権侵害物品の輸入に関する税関当局の職権による取締り権限の付与
等を規定.
  • ビジネス環境の整備
両国政府・民間の専門家の参加を得て,事業活動を遂行する両国企業のためのビジネス環境の整備・向上を検討する小委員会を設置.相手国の企業からの苦情及び照会の受領等を任務とする連絡事務所の設置を規定.
  • 協力
農林水産(フード・バリューチェーン等),中小企業、観光,情報通信技術,環境等の
分野において協力を促進する旨規定.
 
モンゴル経済連携協定における投資に関する主要な条件
  • 双方はエネルギー・鉱物資源を含むあらゆる分野における公正均衡条件を投資家へ付与する.
  • 一方は相手側の投資家の投資を,下記を除く条件で収用・国有化しない
  • 公的目的で
  • 公正均衡条件で
  • 適切かつの賠償金を早期に支払った場合
  • 賠償金は収用・国有化された投資の市場価値と均衡である.収用・国有化の発表により変化した価値は反映されない,賠償金は遅滞されない.遅滞された場合に商業的な金利を投資家に自由利用可能な通貨で支払う.
  • 双方の投資家の送金(対外,対内)を自由に遅滞することなく実施できる環境を
    • 初期投資及び投資拡大化
    • 投資から利益,利子,キャピタルゲイン,配当,ロイヤルティ,手数料及びその他の収入
    • 契約とおりに支払われた料金,特に投資と関連する貸付料金
    • 投資を全体的または部分的に売却した収入,融資からの収入
    • 投資家は送金を当日の為替レートで自由に利用できる通貨で遅滞なく実施できる.                          双方は上記を保証する
  • 双方は下記の場合,自国の法律に従い平等・無差別条件で送金を制限できる
    • 破産,支払不能または貸し手の権利保護
    • 株式発行,売却,取引
    • 刑事または刑事犯罪
    • 判決または判決の遵守を確保
  • 双方の投資家との間の投資紛争解決
    • 「紛争投資家」と「紛争当事者」の間の投資紛争を,当事者は,可能な限り協議により円満解決する
当事者が紛争投資家」に対して協議を書面により要請してから120日以内に解決できなかった場合,
「紛争投資家」は下記の国際仲裁裁判所へ告訴できる.
  • 「ICSID条約」に伴い設立された仲裁裁判所
  • 国際連合国際商取引法委員会の仲裁規則に基づいて設立された仲裁裁判所
  • 投資分祖当事者達が合意できた場合,他の仲裁規則とおりにある仲裁裁判所
仲裁裁判所の裁定は最終的なものであり,紛争当事者は拘束するもの.仲裁裁判所による裁定の実施を「ICSID条約」と「ニューヨーク条約」を含む関連国際法に伴う.